2004年11月の独り言

1(月)雨っぽい一日。

私は普段、より新鮮な音楽をお客様を前にして提供する機会を多く持っています。CDの録音などは別ですが、演奏会に関して言えば、本番にはその成果プラスその時の即興的なノリとでも言いましょうか、聴く側からエネルギーを受け取ってまたテンションが俄然上がるのです。その時に我を忘れてしまわないように、臨機応変に対応できるように柔軟性も含めて練習する訳です。練習の時に全く当日の状態を予想せずにいて、当日練習通りにできたところで、面白い素敵な演奏ができるとは思えません。できるだけ練習の段階で緊張感を想像して、それでも自分の演奏のいい所を出せるようにしておきたいものです。ただ音符をそのまま再現したり、聴く人達を無視してひとりよがりになるのではなく。。
これが録音となると、自分の現在できる事全てを集約し「緊張してもまず信頼した楽譜の通り正しく、その場しのぎではないいい演奏をする力」が必要となるでしょう。ノリではなく、確実性とでもいいましょうか。そういうつもりで練習を積まなければならないと思います。この場合は聴く人というよりは作品に対する敬意が先に大きな要素となるでしょう。演奏が「生」ではなく「残る」という事をどうやって責任とるか、というと、「あとで聴けるための自信」しかないと思うのです。自信、というと傲慢な感じにも聞こえますが、要するに作品に対する誠実さ、みたいなものではないでしょうか。
今ふたつほど録音の話があって、考えると胃がキュッと音をたてそうなほどです。でも厳しく言えば普段接することのなかなかない「試練」でしょうから、自分が成長するいい機会かと思っています。「一緒に関わる人達には大きな気持ちで、自分には厳しく。」これ、しばらくマイテーマにしようかな。。。


5(金)晴れました。

気づけば今年もあと残り2ヶ月をきったんですね。今年は天災、人災いろいろ起こりました。誰にもどこにもぶつける事のできない天災への困惑の表情が、ニュースから毎日流れます。直接被害を受けなかった我々ができる事といったら、受けた人の傷みを慮る事くらいでしょう。
そうして過ごす私たちにも小さな悩みや傷みはあります。やはり、周りの人間同志で思いやりをもって接し合う事が大切だなぁ、と思います。幸せ不幸せの基準は人それぞれで、その時その時で変わるものです。今相手がどう考えているか、少し想像するだけできっと優しくなれるし、少し怠っただけできっと残酷にもなりますよね。「気持ちをわかろうとせずに、ただ感じたままを口にして傷つける」のと「気持ちをわかった上で、あえて厳しく接する」のとは訳が違います。もし苦い言葉を受けた時、それが単に表面的なものではない、その奥にある優しさ故の言葉だと気づいたなら、感謝して応える事のできる人でいたいと思います。
今年もいろんな新しい出会いがあり、また知り合いの新しい面を発見する事がありました。それで嬉しくなるばかりではなく、がっかりする事もあったのです。仕方ありません。私を中心に世界がまわっている訳ではないんですから。そう言えば今年「世界の中心で愛をさけぶ」というのが流行りましたね!詳しくは知りませんが、なんだか大きくてちょっと素敵な言い回しだなぁ。ちなみに私は「心の真ん中にあったかいものを保つ」ように心がけてます。ちょっと語呂が悪い?


8(月)快晴!洗濯、洗濯っと。。。

昨日、「どらごんず優勝記念の宴(略して、どらうたげ)」をウチで開催しました。集まったのは、8月にウタゲをした時のメンバー6人、それからピアノ弾きの薫さん、山田姫。我々も入れると10人。狭い部屋ながらも、皆さん仲良しメンバーだからかして、リラックスアンドエンジョイな雰囲気で楽しゅうございました。
「どらうたげ」と銘打った今回、一応「応援する野球チームのグッズを持って来るか身につけて来る事」とルールを決めたりしたのです。ウチのダンナが用意したグッズ「燃えよドラゴンズ」のCDが流れる中、3人のドラゴンズファンのうち2人は、優勝記念の雑誌を手にしたまま別室で盛り上がるという追いやられた状態だったりして(苦笑)、結局普通に「飲み会」だった訳ですが。でも、優越感は味わえたんじゃないかな?そして他にホークスファンが1人、ニュートラルな人が3人、偶然だけれどピアノ弾き3人は皆タイガースファンでした。1人は寅の絵の書いたTシャツを着て、1人はタイガースの応援歌などがいっぱい入ったCD持参、私はタイガースのロゴが入ったリストバンドをして、それぞれ「来年こそは!」との思いを強くしていた(と思う)のです。ピアノの話でも、タイガースの話でも盛り上がれるなんて、なんだか素敵だと思いませんか?もう既に趣味の合う事があるってわかっているんですから、親近感が自然に湧くのです。
さぁ、来年は何うたげになるんかな?「どらうたげ」じゃなくて是非「トラうたげ」になりますように!


14(日)紅葉シーズンながら、まだ山の赤みは今ひとつ。。

毎週木曜日クリトメリアの練習に通う中で、団員さんたちの温かさと豊能町の四季おりおりの景色にも魅了されながら2年弱が経ちました。そして今日は私の豊能音楽祭デビュー!!会場となる「ユーベルホール」は、飯沼さんから「能勢の山奥とは思えないほど(笑)素敵なホールよ!」とは聞いていたので、かなり楽しみにしていた舞台です。
今回も、お客様の耳に優しいおなじみの2曲を選び、彼女たちらしい誠実な歌唱で聴かせられたように思います。ユーベルホールは、いい響きを優しく隅々まで運んでくれるホールで、舞台にいて「寂しく」ならない雰囲気も気に入りました。すぐ前の出番だったハワイアンが超ナゴミ系で、リラックスさせてもらえました。いやぁ、よかったよかった。。
その後いったん自宅に戻り、撮影機材を車に積んで、来年の「カンティサクレ・アンサンブルキアーラ ジョイントコンサート」のプログラム用写真(指揮者と伴奏者と音楽監督の分)を撮りに出発。カメラマンはダンナ平林で、今回は2団の指揮者も伴奏者も一緒に集合したものにしようと計画、指揮者のサワコさんと松尾さん、ピアニスト紺谷さんと私、両団音楽監督のナナエさんの5人で、格好よさげに撮りました。詳細は見てのお楽しみです。ふふふ。コンサートは2005年2月20日、京都のアルティにて開催されます(今後の放浪予定参照)。たくさんのご来場、お待ちしてます!


15(月)雨のちくもり。今朝は冷えました。

ここ何日かで、やっと今どきの気候になってきました。急激に寒くなっているので、巷では風邪が流行ったり、まだ11月なのにインフルエンザになる人もいるとか。皆さん、帰ったらすぐにうがい、ね。
いよいよコンサートシーズン、これから年末年始にかけて毎年恒例の身辺慌ただしい季節です。しかも、年明けには学校公演や録音、伴奏の話があり、例年ならオフシーズンの時期に大仕事が待っていて大変です。ここしばらくは、12月にあるふたつの大学の定期演奏会の練習と、上旬にある大津でのコンサートの練習でてんやわんやの毎日です。大津でのコンサートでは、リヒャルト・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」というオーケストラのための作品を、オーボエとファゴット、クラリネット、そしてピアノという形で演奏するのですが、このピアノパートが超ウルトラD難度の編曲になっており四苦八苦しているところです(苦笑)。弾けるようになるんだろうか。。。
こういう毎日にジムがいい気分転換になっています。「冷や汗」や「脂汗」しかかく事のない生活の中の「気持ちのいい汗」!!職業病でもある腰痛の緩和のためにも、さぁ、明日も行くぞー!


17(水)秋らしい爽やかな晴れ。

この時期になると、街に早くもクリスマスの様子がチラホラしてきます。ラジオからクリスマスソングが流れたり、デパートの装飾に大きなツリーが現れたり。それでなくても気が急く季節なのに、です。なんだか必要以上に動きがセカセカしたりして。個人的には、車の運転がアラくなりやすいかも。無意識にイライラしてるんでしょうか。世間の流れの早さにかこつけて、人の気持ちを思ったり人のペースについて考える事を忘れそうになるのです。これはいけません。まぁよく考えたら、例えば信号ひとつ先に行ったからといって、前の車を追い越したからといって、結果はそう変わらないんですよね。でも、イガイガした気持で車線変更したりする自分がいるのです。そんな自分に気づいた時は、深呼吸でもしてすぐに冷静になれたらいいのですが。。。
そんな事を思いながらジムで汗を流した帰り道、もうすっかり日は暮れていました。運動して身体がぽかぽかしているので、この季節のヒンヤリとした風が本当に心地よく、ふと立ち止まって見上げればきれいな星空。別になんでもない日常のヒトコマです。でも、なぜか胸が熱くなりました。立ち止まったら見えてくるものがあるんですね。腰が痛くて始めたジム通いですが、その道中もまた身体と心にいいようです。


29(月)爽やかな晴天です。

土曜と日曜、多治見の両親と4人で信州に行ってきました。お天気にも恵まれて、長距離ドライブでしたが楽しく快適な旅となり、「晴れ男」のお父さんに感謝です。信州は多治見の両親の出身地でもあり、親戚が何件か暮らしているので、挨拶にも行きました。私が初めてお目にかかるダンナのいとこさん達、実はダンナも10年ぶりだとか20年ぶりだとかで、幼い頃の記憶がよみがえったようで、「変な汗が出た」と言っていました(笑)。それでも、お互い元気に再会できるのは幸せな事です。結婚の報告以来のご無沙汰になってしまった親戚も「よぅ来てくれたねぇ」と喜んで下さり、お土産にはお米や野菜など自家製の新鮮なものを持たせて下さいました。そして、私が幼い頃家族で行った思い出の「碌山美術館」に行ったり、この時期にやっているリンゴ特売にも出かけたり、いい具合に雪をかぶった素晴らしい山々をパノラマ状態で見たりもして、心から秋の信州を堪能しました。今ウチの中は、持って帰ってきた野菜や果物、和菓子などで片づかないけど幸せな状態(?)です。来年は「うたう劇場2005」(今後の放浪予定参照)と時期が重なるので、次は再来年のお楽しみ、かな。


30(火)穏やかな日。。

昨日知り合いと話していて、あるピアニストの死を知りました。亡くなったのは去年の秋だそうです。その人は私の学校の先輩に当たる人で、私がこの世界でまだずっと日が浅い頃に、既にいろんなところで活動されており、人柄も音楽も品がよくて一見静かなようで、内に熱い何かを秘めた人だと感じていました。
当時彼女と私がピアニストをつとめていた合唱団の演奏会直前、なんと左手小指を骨折されて、私のところにも電話があり、「なんとか指使いを考えてやってみるけど、ダメだったらお願いするかもしれない」と言われました。当然です。骨折すると、その指をかばってバランスが崩れ、まず普通弾く事は無理なのです。ところが、結局彼女は本番弾ききりました。しかも、なんの破綻もなく見事に。
こういう仕事をしていて時々思いますが、過去の肩書きだけでは実際何も残せないのです。問題は本人の意識しないところで、どれだけその人の功績が「人となり」も含めて人の心に残っていくか、それが文字では残せない小さな事だったとしても。彼女の演奏はもとより、その「心意気」みたいなものは、きっと当時の団員たちの記憶に鮮明に残っているはずです。尊敬すべき素晴らしいピアニストでした。心よりご冥福をお祈りしたいと思います。

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